綺桜の舞う
あんずちゃん的には、甘い誘惑なんだろうね。
知ってる人からそういうふうに甘やかしてもらえるのは。


「うん、無理に俺たちのとこ来たくなかったら友達いるところとか、家から一番近いところとかでもいいんじゃない?
迎えに来てって言うなら、俺いつでも迎えに行くよ?」
「……伊織さんって、都合のいい男って感じ満載ですね、いいように使われますよ?」


ムッとするあんずちゃん。
相談の根本がズレてることにあんまりいい顔はできないらしい。


「いーよ?都合のいいように使ってくれて。
それであんずちゃんが笑ってくれるなら、いいんじゃない?」
「紳士なのかタラシなのか、どっちかにしてください」
「俺はただのマザコンかな〜」


軽口を叩く俺にあんずちゃんはまたもやため息。
どれがほんとで何が嘘なのか、俺の口ぶりじゃわかりにくい。


言ってしまうと、俺は嘘は言わないし、軽口は言うけど、ほんとに思ってないことは言ってないつもり。
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