綺桜の舞う
32.なぐさめ
1階、校舎の一番奥の自習室。
人気がなくて、ここはいつも誰もいなかった、去年は。


今年は約1名、真面目なフリをしている奴がいるんだけど。


「見つけた」


部屋の一番奥、部屋の角、仕切り付きの机が並んで入り口からは死角になる、そこに。


「琥珀」


彼女はいた。


「……学校で会いに来ないでよ。ユキ人気なんだから、勘違いされたら困る」
「だから、自習室にいるの狙ってきたんだよ?」
「……ここいるの、知ってたの?」
「毎日来てるみたいだからね、さすがに」


黒く髪を染め直した琥珀は口を尖らせてイヤホンを外す。
髪は少し傷んで、触ると少しきしつく。


「何聞いてたの?」
「なんでもいいよ」
「聞きたい」


俺は琥珀の手からイヤホンをさらうと耳につけてみる。


「ん〜……誰?」
「アイドル」
「あーね、あー、あれでしょ?芸能コースにいる子でしょ?」
「そう」
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