綺桜の舞う
「叶奏、後で蛍のあげるね」
「やめろ。餌付けするな。お願いだから」
「でもでも、叶奏からのチュー、嬉しくない?」
「う……、っ」


蛍はにっこり笑って俺のことを見る。
明らかに今嵌めようとした。
絶対、言わせようとしたこいつ。


オーディエンス、女子なだけあって、本当に嫌な顔をしてやがる。ニヤニヤして。


「叶奏」
「……はい」
「絶対飲まないで」
「……はい」


叶奏はしゅんとした顔で俺からオレンジジュースを受け取る。
これはこれで美味しい、と満足しながら飲んでるあたり、別に飲み物なら酒にこだわってるわけでもなさそうだ。
……ストレス溜まるのはわかるけど、夏終わりぐらいから急にだな、ほんと。


「はぁ……」
「今日の公開処刑は免れない、お疲れ」
「なんで」


いつもの位置に腰を下ろすと、案の定、夕も俺の隣に座って、叶奏が口をつける前だったチューハイを持っていく。
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