綺桜の舞う
「叶奏、叶奏。ついた」
「ん……好きだよ?」
「……そんなこと言ってねーよ」


俺は叶奏を抱き上げてアパートの中へ。
俺の部屋の前に立ってふと、気づく。


「あぁ、家の鍵忘れた」
「……ん、?」
「倉庫だわ」


……やったな、これは。
今から倉庫に戻るとか、叶奏をどうすればいいか。
連れて行くにも危ないし、置いて行くにも不安だし。


……って、あ。



「ん……わたしのへや、あいかぎあるよ……?」


叶奏はポケットから隣の自分の部屋の鍵を取り出した。


「開けていーの?」
「だめなら渡さない」
「ん……」


……今思えば。
叶奏の部屋とか、初めてかもしれない。
出会って2年弱、付き合って早9ヶ月。
今まで俺の部屋で過ごしてきたけど、叶奏の部屋に入るタイミングなんて、1度も。


……やば、どうしよ。
禁忌な気がしてきた。
どうしよ、開けてゴミ屋敷とかだったら。
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