綺桜の舞う
「……なんかそれっぽくてむかつく」
「それっぽいってなんだよ。譜面は読めるだろ」
「だってほらほら、湊くんが座ったタイミングからちらほらオーディエンスできてるよ?」


叶奏にそう言われて周りを見てみる。
ちらほら、手を止めてこちらを観ている女子たち。


「……だから嫌なんだけど」


単純に観られるの嫌いなわけで。
中学のときからこんな感じだったからなんとなく予想はしてた。


「……私も思ってた以上に嫌かもしれない」


しゅんとした顔で俺を見下ろす叶奏。
普段ならここで、そうだろな、とか言って立ち上がるのが俺なんだけど。


「まぁ、やれって言ったの叶奏だから」


なんとなく意地悪してみたくなる。
こう言う時しか、叶奏がヤキモチ焼くことなんてないから。
たまには可愛いとこも見とこうかなって。


俺はそんなひねくれた気持ちで、譜面を音として流す。
まぁ予想通り、ワンコーラス演奏するだけで集る女子の量は増えるし、叶奏はムッとした顔をしつつも、一応真面目に見てる。
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