綺桜の舞う
「ん、こんなん」
「……嫌い」
「はいはい、まず譜面覚えて」
「……いいよ、手で覚える」


叶奏は俺からスティックを受け取ると、俺がさっきしたみたいに、リズムは上々、さっきより楽譜よりの演奏になった。


「……俺のコピーすんのやめろよ」
「だって譜面読めない」


とか言いつつ、1発で覚えるのは割とキモい所業だと思うし、譜面確認しつつ、基礎知識だけでちゃんと吸収してる。


最初からちゃんと教えとけばよかった、そういえば飲み込みだけはいいんだっけ。


「あ、いけるかも!」


叶奏は嬉しそうな顔で演奏を始める。
気持ち悪いくらい正確度が増した。
さすが、飲み込みだけはいい。


「本番には間に合うんじゃない?」
「ほんと?」
「まぁ、ちゃんと練習すれば」


叶奏はもうテンションマックス。
さっきのムッとしていた顔なんてなかったみたいに真面目に練習に励み出す。


……真面目な顔とか、いつ見ても見慣れない。
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