綺桜の舞う
俺はなんとなくスマホを取り出して叶奏の背後から動画を回す。
……いや、バレたらあれじゃん。
盗撮する叶奏と同類にされかねない。


俺的には頑張ってる叶奏も割とかっこよくて好きだけど。



「叶奏ちゃん〜、ボーカル合わせたいんだけどいける〜?」


しばらくして遠くの方から女の子の声。
結局2グループ所属することになったらしくて、割と忙しい。
いくら音楽関係に強くたって、クラス全員がそうってわけでもないだろうし、裏方も人数いるから表の人も数が足りないらしい。


「あっはーい、今行きます〜」


叶奏は呼ばれた方へダッシュ。
走るのははやい。
置いてけぼりにされた俺はスタジオの隅っこで座り込んで見学。
もちろん、見ているのは叶奏だけなんだけど。


「え、ねぇ。サビ自信ないからハモってもらえたり?」


……やめとけ。なんだサビ自信ないって。


「あ、じゃあ伊織くんに全振りしよう。
あの人多分なんでもできるでしょ」
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