綺桜の舞う
……叶奏の前で戦ったことないから、できないわけじゃないことを叶奏は知らないわけだった。


……頼りない、俺。


「えーっとこのまままっすぐ、突き当たり右の路地頑張ってくねくねしたら撒けると思う」
「……あの路地死ぬほど細いぞ?」
「うん。頑張って」


俺は腹を括ってスピードを上げる。


「ねぇねぇ、軸いけてる?」
「は?」
「いや、この辺多分下手に長い鉄パイプ並んでるとこあるから通り過ぎるときに蹴り倒しとこうかなって」
「馬鹿。普通に無理なんだけど」
「そこ左」


叶奏は有無を言わさず俺を誘導する。
俺は渋々叶奏のいう通りに進む。


結論を言う。


……読まれてた。


「なんでだろ」


叶奏は鉄パイプを倒すまでもなく、俺が止めたバイクから降りる。


「こんにちは、叶奏さん」
「こんにちは。総長さん自らありがとうございます」


例の白髪。
この前のもう1人の白い女はいない。
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