綺桜の舞う
「いや……脂っこそうだからいい。胃が耐えられない」
「そっか〜。じゃあまたおうちで食べようね」
「あぁ」


叶奏はぺろりと3つくらい入っていたカップを空にして、ゴミを通りすがりのゴミ箱へ。
そして唐突に。


「あっ、叶奏」


キャッチが入る。


「あ、ユキ。お店番?」
「そーそ、お化け屋敷ね。入ってく?」
「んーん!怖いからいらない!」


元気よく、笑顔で答える。
怖いのは嫌いらしい。


「入ってきなよ?平均3分とかで出てくるしそんな怖くないよ?」
「それユキが言っていいの?営業妨害じゃない?」


叶奏は笑顔で身体の前で手を振ってゆっくりと歩き出そうとする。


「入んなくていいの?」
「い、いい、いいよ。私暗いとこあんまり好きじゃないし、怖いの怖いし」


心臓ぶっ飛んじゃうよ?という叶奏。
そんなことを言っても、俺はこういうの割と好きだったりする。
意外かもしれないけど欲に勝てなくてお化け屋敷だけは元カノと入ったことがある。
……叶奏には絶対言わないけど。
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