綺桜の舞う
「蛍〜なんかあった?顔怖いよ。
また朔とケンカしたの?」


私は蛍の手を握って顔を覗き込む。
コンビニまでの道、やけに暗い。


……いつも、通らない道だ。


「蛍……蛍、」


小さな声で自分の名前を復唱する蛍。
何があったかはわからないけどとにかく様子がおかしい。


「蛍?」
「……っ、来た、」


突然、ハッとしたように足を止めて、くるっと振り返る蛍。
私も何事かと思って振り返った。


「どしたの?誰もいないよ?」


隣の蛍に目をやると、何故か私のことをじっと見ていて。


「ごめんなさい……」


その一言の後、私は後ろから回ってきた手に抵抗できず、鼻元に当てられたハンカチからは薬の匂い。



意識が途絶えた。


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