綺桜の舞う
◇ ◇ ◇
次に目を覚ましたのは、見覚えのある場所だった。
「……鬼王」
夏休み以来の、鬼王の倉庫。
鬼王に拐われたこと、蛍が裏切っていたことを瞬時に悟る。
「あ、起きました?お姫様」
「お姫様では、ないんですけど」
「俺にとってはお姫様ですよ」
茶髪もいいですね、なんて言う鬼王総長の白髪が目に入る。
起き上がろうとしたけど、手錠がかけられていて動きづらい。
私は腹筋だけで体を起こすと、ベッドに繋がれた鎖を限界まで引っ張る。
重い音。
「叶奏さんの手に傷がついてはいけないので、軽めの鎖にしてみました。いかがですか?」
「いかが、って言われても……つけ心地は最悪ですよ?」
頭の痛みが意識の覚醒と共に。
やけにいい匂いのするこの部屋と相まって気持ち悪さが凄まじい。
「どう、する気ですか?」
「今回の俺たちの目的はあなたの記憶を取り戻すことです」
「……どこ情報ですかね?私の記憶」
「あなたのことなら、なんだって」