綺桜の舞う
にっこり笑う男に、怖気がした。
危ない、気がする。


「まぁきっと後1時間以内にはあなたのお連れさまがやっていらっしゃると思うので。
それまでは、俺と遊びませんか?」


一歩ずつ、高そうな靴音で私に歩み寄ってくると、私をベッドに押し倒した。


……あれからどれくらい時間が経っているかわからない。この人が1時間って言っているけど、実際にそう思ってるのか、口から出まかせなのか。
とにかく、1時間も2人にされると完全にアウト。


「……蛍は?」
「あぁ、蛍さんですか。隣の部屋でゆっくりしていらっしゃいますよ」


重役の方、なので。と笑う白髪。あなたもですけど、と呟く。


何が、あなたも、だ。重役もクソもない。
こいつにとって重役にされたところで、私からしたら危険が迫っていることに変わりはない。


「いつみても、可愛いですね」
「見た目で運命を確信できるなんて、能天気ですね」
「知っていますよ、あなたのことは。あなたよりも」
< 331 / 485 >

この作品をシェア

pagetop