綺桜の舞う
36.2年の綻び
◇ ◇ ◇
「叶奏っ!!!」
どさっと崩れ落ちる叶奏。
背中に冷や汗が流れる感覚。
……取り乱したか。
つい数秒前、総長、と甲高い声が響いて、伊織が怯んで、有村が鉄パイプを向けられた陽向の前に出た。
間一髪、鉄パイプをいなして、陽向の膝を蹴る有村。
「消えるとか、無責任なこと言わせないから」
刺さる言葉に歯を食いしばる陽向。
───戦いの、流れが変わる。
「夜桜中枢陣営、特攻隊を先頭に中央地帯殲滅。
放射状に広がる形で敵陣制圧。逃げるなら今。敵は逃すな、1人残らずぶっ潰せ。階段へつながる道の形成が最優先事項。
俺のこと、覚えてるやつは動いて」
いつもと違う、真っ直ぐな言葉。
凛々しいくらいの“俺”という一人称。
知らないやつでもわかる。
約3年前に消えた、夜桜の元総長、空井陽向。
傷一つない夜桜総長はここに君臨した。