綺桜の舞う
それも。この辺の倉庫の構造上、あれは2階ではなく3階。


文化祭終わりってのもあって異様な疲れが既に押し寄せている。
これは、明日動けないな……けど。



「ここで立ち止まれるわけねーって……」


目の前に、ひらり、と黒髪の女が現れる。
いつの間に、ここまで来ていたのか。


「……そこ、退けよ」
「ボク、君に伝えなきゃいけないことがあるんだ」


俺の言葉なんかなかったみたいに、言葉を紡ぐ。
真っ直ぐ、俺の目を見て、なのにどこか揺らぐ瞳は一滴、涙をこぼした。


「……なんだよ」
「ボク……」


ゴクリ、と言葉を飲み込む相手の喉の音。
早く、そこを退いてほしい。
実力行使も厭わない。
今は少しでも早く、叶奏のところに行かなくては。


「ボクのことを……覚えていてください……」
「あ?」
「ボクのことを、少しでいいので……あなたの頭の片隅に、残しておいてください……」
「心配しなくてももう消えないだろ。フツーに。こんなことやらかしてくれてんだから」
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