綺桜の舞う
黒髪の女は喉に何か詰まったみたいに言葉を止めると、さっと道を開けた。


「……お前は、俺の邪魔しなくていーわけ?」
「バレたら怒られるのわかってるんなら、早く通ってよ。
真っ直ぐ行って右」


最初の声色に戻った黒髪のいうことを俺は素直に受け止めて走り出す。


振り返るともうそこには黒髪はいなかった。





「叶奏!」


鉄柵に寄り添うようにして倒れている叶奏を抱き上げる。
カチャリ、と金属音。


「……っ」


ここにきて……。


ピッキングの痕が残っているところを見たら、挑戦はして失敗したのか、それとももう一度付け直されたのか。
どちらにせよ叶奏が意識を戻す気配はないし、ピッキングの力になってくれそうなものはここにはない。
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