綺桜の舞う
38.昔話


「とりあえず、僕の話をしなきゃなんないよね」


夜の夜桜倉庫。
時計台の下に隠された薄寒い空間。


現在入院中の叶奏に変わって総長の席に座るのは陽向。
ここに揃ったのは、俺と伊織、夜桜側も有村と朔だけ。
夕は学校、受験も近づいてきて忙しい時期。
雪兎は……どっか行った。


きっと夜桜のメンツは今から話してもらう陽向のことはしっかり理解していて、それでも綺龍にいる陽向を受け入れていたんだと思う。


「3年前、僕はここの人間でここの総長だった。
僕が叶奏のことを次の総長に指名して、すぐくらいの時にあの抗争が起こった。


僕はあの当時から攻撃特化型で防御ガバガバだったんだよ。
あの日も、この前みたいに僕は鉄パイプが背後に迫ってるのを知らなくて。


叶奏が僕のことを助けてくれた。記憶と引き換えに」


同盟を組んだあの日、陽向は叶奏のあの昔話をどんな気持ちで聞いていたんだろうか。
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