綺桜の舞う
「敵が知り合いか……」
「……2人とも、降りるなら今だよ。
昔の仲間と戦えない気持ちは誰にでもわかるから。
ただ、抗争が始まってからやっぱり戦えないは、今回ダメだよ。
多分、僕たちにそんな余裕ないから」


3年前の抗争に俺たちは参加したわけじゃないし、全てが終わった後に知ったくらいの情報しかない。
ただ、夜桜が撤退したのは事実で、それは相手が強かったってこと。
俺らの今の戦力合わせたところで勝てるかどうかは怪しい。
当日になって欠員が出ようものなら勝ちの可能性なんてないに等しい。


「今回は多分、叶奏は戦力にならない。
当時の幹部面子も僕しかいない。
夜桜の人数は昔の半分だし、今までの甘い戦略じゃ通用しない。
……2人は、戦える?」


陽向の、いつにもなく真面目な顔。


「俺はいけるよ。いくら仲良くても、傷つけられたくないものって、あるから」


伊織はいつものように笑う。
なんの屈託もない言葉に、隣で俺は少し、たじろいだ。


……。
覚悟を決めるなら、早い方がいいと、思ってる。


「俺も。言っちゃ悪いけど薫風より叶奏のが大事だから」
「湊も変わったねぇ……」
「うっせぇ」


少なくとも、俺にだって手放したくないものもある。



結局この日の話は、全員が揃ってないから、ってのと、叶奏の復帰が最優先ってことで、なんの進展もなく終わった。
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