綺桜の舞う
「叶奏、キス下手になった?」
「わ、わかんない……」


ゆらり、と瞳が揺れる。
泳ぐ視線、開きかけの何も言わない口。


昔の男の記憶が、あったか。
それはそれは、色々しているご様子で。


「する?……したいんだけど」
「……体力戻ってないからあんまり長いことできないよ?」
「それはもとから俺もだから」


なんていうか。
他の男の感覚を俺で思い出されるとイライラするというか。
他の男と仲良く夜を過ごす時期があったって思うだけで、叶奏のこと壊しそうになる。


絶対こんなの、直接叶奏には言えないけど。


……他の男の記憶を抹消するくらいには俺を上書きしなきゃとは思う。


「……ちょっとだけだよ?」
「無理はさせない……多分」
「その約束、守ったことあったっけ」
「ノーコメント」
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