綺桜の舞う
「あ、うん……大丈夫だけど」
「そっか、よかった」
「姫野は、怪我してない?」
「うん、大丈夫だよ」


優しく微笑む姫野に、さすがに今は安心なんてできなかった。


さっきの惨劇と言っても過言じゃないくらいの何かを見た後で、笑えるほど俺の肝は座っていない。
あれだけしっかり殴っていて、血が一滴も流れていないのは、多分姫野が場数を踏んでいるから。


「……ごめんね?びっくりさせちゃったよね?」
「あぁ、うん……まぁ」
「一応、夜桜の総長だから……そこだけは忘れないで」


姫野は不安そうな顔をして、俺のことを見つめる。


……確かに、そうだよな。
俺たちの族ができたのは夜桜がこの世界から姿を消した後、丁度2年前。
だから、夜桜のレベルがどんなものかを経験したことなんてなかったけど……確かに、世界一、なんて謳われるような族がその辺の族と同レベルなはずがない。
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