綺桜の舞う
「蛍が俺のこと守りたいって思ってくれたみたいに、俺もみんなのこと守りたいんだよ。
みんなの居場所を守りたい、俺の居場所を守りたい、蛍の居場所を守りたい。
俺1人じゃダメなんだよ、蛍。
みんないなきゃダメ。叶奏も連れて帰る。
蛍も、いなきゃ楽しくない。


だから、俺と一緒に戦おう。
姫は姫らしく車乗っとけなんて言わない。
裏切った分の代償は身体で返せ、蛍。
それが俺らだ。
勝ちを運ぶのが俺らの仕事だ」


にっこりと、笑顔が向けられる。
朔は蛍のことを抱き起してギュッと抱きしめた。


……こんなの、全部夢だ。
幸せなんて、蛍にあるはずない。
蛍には、そんなの似合わない。


だって蛍は、ずっと誰かの言うことばっかり聞いて生きてきた。
ママが幸せならそれでいいと思ってた、薫風が幸せになるならそれでいいと思ってた。


蛍の周りの誰かが幸せならいいと思ってた。


朔が幸せなら、蛍は不幸でも構わないって、そう言うふうに生きていたのに。


「蛍が俺の隣で笑っててくれなきゃ、俺がここで戦う意味なんてないから」







これじゃまるで、裏切り者の蛍の幸せを祈ってくれてるみたいじゃないか。
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