綺桜の舞う
私のことを好きだと思ってくれる人の隣にいたら、いつか陽向のことを忘れられると思っていた。
本当に、無理でしかなかった。


私には陽向しかいない。
いなくなられると、本当に。今度こそ。


私が死んじゃうから。


私に向かって拳が飛んでくる。
私はそれを避けることなく腕で受け止めて、骨が軋む感覚に耐えながら、拳を繰り出す。
交わせない。
陽向に前に進んでもらうためには、私が全部受け止めなきゃ。


……き、つい。


昔より、背後のカバーが甘くなってない?
ダレてんじゃない?ふざけてる。


こっちは2人分の命を背負ってるっていうのに、陽向は余裕な顔してる。もっと捌いてくれ。


じゃなきゃ、私の体力がもたない。


次々と繰り出される拳、敵の切れ目、最後の一発が、ピキッと、骨にヒビを入れた感覚があった。


「……っ、ぅ」
「沙彩ちゃん!?」
「……だ、まって、前向いてて。
まともに敵捌けてないんだけど……カバーきついよ」
「ご、ごめんっ……」
< 399 / 485 >

この作品をシェア

pagetop