綺桜の舞う

「大丈夫、わかってるから。俺こそ、頼りにならなくてごめん。辛いことさせた」
「ううん、大丈夫だよ。湊くんが怪我しなかったらなんでもいい」


湊くんが怪我してたら、もしかしたら全員殺してたかもしれないけど、と飄々と呟いた姫野から、人を殴ることになんの慈悲も感じていない軽さと愛の重さを感じざるを得なかった。


寒気がした。
怖気だった。
初めて人間を、ここまで怖いと感じた。


……怒らせてはいけない。絶対に。
それが、今日感じた1番の恐怖だった。


タッタッタ、と背後に聞こえた消えていく足音には振り向けなかった。
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