綺桜の舞う
気、散ってた、と前を向き直す陽向。
額の汗が、冬を思わせない。


「なんでそんな気散ってんの。敵に集中してよ」
「ごめんね、その……沙彩ちゃん、僕のこと好き?」
「……何、こんな時に。真面目にしててよ」


背中越しに、戦場とは思えないような発言。
私の腕はすでに限界、次はもう、ない。
敵からの攻撃を受ける前に倒す他、ここを切り抜ける希望はない。


「僕さ、本当に……最低だったなって思って」
「だから、なんなの急に。おかし───」
「好きな人に離れてほしくない気持ち、知ってたはずなんだよ、僕だって。
なのにあの時僕、死にたいなんて言って、沙彩ちゃんの前から消えて、本当に、最低だった」
「……」


……今更気づいたって、だからなんだっていうんだ。
私が傷ついて、悩んで、こっちこそ死にたくなって、そんなの今更悔いられたって、今更なんて言ったらいいんだよ。


……私が思ってること、全部投げたらそれでいいの?
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