綺桜の舞う
私は薫風の手を掴んでゆっくりと起き上がった。
半日以上寝ていたから、身体が痛い。


私は壁に持たれて、部屋を見渡してみる。
ふと、そこで気づく。
倉庫の最奥部、総長室にいると思っていたけど、その手前の会議スペースだ。
家具も何もかもが、なくなっている。ベッドだけ。
綺龍の倉庫に比べたら広すぎるくらいのこのスペースはよく、私が薫風に戦いを教えてもらった場所。


なんだろう、身体がだるい。
……あぁ、昨日飲みすぎちゃったのか。


「琥珀から聞いたけど、あの伝言何?」


薫風のイライラした声。
すぐに機嫌が悪くなるのはなんなんだろう。


好きじゃない、ってあの話……だよね。
今なら思う、言わなきゃよかったって。


「……何も、ないよ」
「何もないわけないでしょ。


どーせ、湊にうつつ抜かしてんでしょ。別に俺のこと好きでいろなんて言わないけど、俺の隣から離れることが許されることだと思ってんの?」


……歪んでいる。
薫風だって私のことは好きじゃない。
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