綺桜の舞う
なんでもない、ただの捨て駒で、都合のいい女。
なのに私に固執するのは……なんでだろうか。
別に、そんなのどこにでもいるだろうに。


「んで、湊と何やったの?」
「なに、って……?」
「まぁ高校生だからお盛んだよね、って話。別に言わなくたって湊のことだし色々やってるんだろうけどさ」


……さっきから、なんだか。
湊くんのことを見知ってる、みたいな。


「ねぇ、叶奏。いいこと教えてあげるよ」
「……なに、」
「ここまで俺が、叶奏に固執する理由。
本当はただの捨て駒にするつもりだったよ。
記憶失ったって聞いた時も、なんとも思わなかった。


……だけど湊と関わりだしたって聞いて、気持ちは変わった。
嫌なんだよね、俺。湊に負けるの。
湊が幸せになるとか、見てらんないんだわ」
「なんで、そんな……目の敵に、」
「湊が俺と同じ施設出身で、俺があいつのもともとの親に引き取られたからだよ」


…………、


何を、言っているんだろうか、この人は。
わからない、頭が働いていない。
真っ白だ。
だって薫風は、組の人間で。
……なら、湊くんは……。
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