綺桜の舞う
「叶奏、俺昨日の酒が効きすぎて身体鈍いんだよ、やめて欲しいんだけど」
「私も、頭重いよ」
「俺これから、お前のこと連れて帰るためにあの魔王と戦わなきゃなんねーんだろ?自分の彼女に手を出す趣味はないし、できれば俺の後ろで戦いが終わるのを待っててくれるとありがたい」
「……む、り」


ここで負けることは、死に値する。
薫風に殺されて終わり。
そんなの、嫌。


「叶奏、酒で記憶なくすタイプじゃないだろ。
昨日行ったこと、覚えてんならその拳下ろして欲しい」



『……俺は、ちゃんと信じてる』
『ちゃんと、守るから』


あの真っ直ぐな瞳を、信じれたら、どれだけ良かっただろう。
信じるって、どうしてこうも難しい話なんだろう。


「なんだかんだ、俺お前のこと好きな素振り死ぬほど見せてきたと思うんだけど」


口にはほとんど出さなかったけど、と私が繰り出す拳を受け止めて、そのまま私の身体を自分の腕の中に引き摺り込んだ。
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