綺桜の舞う
そう言って湊くんは私を伊織くんに押し付けると、絶対逃げ出さないように死ぬ気で捕まえとけ、と言い残して、琥珀ちゃんと目配せをした。


「どっちならいける」
「どっちも、いけないです。
少なくとも、お父様は、絶対に」
「もう親じゃない人のことそんなふうに呼ぶ必要ないだろ。
俺、あの上行ってくるから。雪兎でも使って薫風ぶっ潰しといて」


そう言って、湊くんはゆっくり歩き始めた。
こっちらをしっかり見据える、あの男の元に向かう。


「湊。俺はお前と戦うためにここにいる」
「違うだろ、お前の目的は夜桜倒して1番になること。大人しく夜桜と戦ってろ。……俺はここから出るために過去を精算する」
「お前が相手なら話は変わる。
お前は俺の宿敵だ」
「勝手に言ってろ。俺があのおっさん倒してそれでもまだ立ってたら構ってやる」


戦況が、目まぐるしく変わる。
私の頭じゃ追いつかないくらい。


私は伊織くんにがっちりホールドされて動くこともままならない。
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