綺桜の舞う

てか俺、今日わりと無理してる。あんたが思うほど強くないよ」


天馬は、そうか、と笑って、カチャリ、と弾を装填した。


「それじゃあ、お前はここで終わりだよ。残念だな、実力はあるのに」
「そりゃどーも。俺も一つだけ聞いていいか」
「なんだ、冥土の土産にしてやろう」
「あの、琥珀とかいうやつ。
あいつにも俺と同じ教育してたわけ？」
「あぁそうだな。
ただ、琥珀はダメだ。あいつはお前ほど見込みがあるようには育たなかった」
「それで、捨てたのか」
「捨てたは違う。離婚したんだ、琥珀は引き取らせたよ。
ただ、薫風は違った。私の見込みは間違っていなかったよ。
努力家で、見様見真似でよく頑張る子だった」
「へぇ……」


……これでも、俺は、この人のことが好きだった。
たった1人の父親として、純粋に。


幼い頃の記憶なんて曖昧で、そういう固い事実は覚えているのに肝心のそれを裏付ける思い出やらなんやらは何も覚えていない。


一つだけ言えること。
それは、今更この人に未練なんてこれっぽっちもないということだ。