綺桜の舞う
右肩から血が滲む感覚。
結構デカめのハンデ背負ってるよな、今回。
絶対1人じゃ、きつい。


……けど。
言ってられない。
あれだけ怯えた瞳をしていた叶奏が、薫風に向き合っているのに俺がここでこいつを倒さないでどうする。


叶奏を信じているって言ったのは俺。
助けるも、守るも、多分叶奏に伝えた。
約束は守らなくちゃいけない。
ましてや叶奏も戦ってくれているのに。


「……弱音なんか吐けるかっての」


俺は次々と技を繰り出す。
相手に隙を与えない。
言っても相手は50近いじじい。
どうにかこうにか、鈍った身体でも一進一退の攻防ができるような、年齢にふさわしい老い方をしているただの老ぼれ。
気さえ抜かなければ、チャンスは、


「……っ、今か」


───来る。


「……ぐぁ……っ」


ザッと、身体が地面を引きずる。


「悪いな、私の隙を埋めてくれるのも懐の鉄の塊って話だよ」


2度目の右肩、続いて腹にぶち込まれた足。
わりといい流れだったはずなのに、流石に武器には勝てないか。
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