綺桜の舞う
「……っ、け、ほ……っ」


「終わりだよ、湊」


下手に立ち上がっても、撃たれるだけか。
動かなくても、同じ流れ。


……結局、詰みか。


あぁ、終わった、と。
唐突な形勢逆転からの相手への優勢が勝負を決したと。


「諦めないでよ……っ」


その声が聞こえて、天馬の頭に飛び蹴りがクリーンヒットするまでは、そう思っていた。


「……琥珀」
「せっかくこっちはユキと一緒にいられる立場になったのに……ボクの幸せ、取らないでよ……。一応、お兄ちゃん、なのに……」


『ボクのことを……覚えていてください……』


ああ言った時と同じ瞳で、琥珀はそう呟いた。
直前の飛び蹴りなんかなかったみたいに俺のことを見下ろして、ポタポタと涙を流していた。


「諦めんなもくそも、お前が決めてんじゃん……」


立ち上がる気配のない天馬。
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