綺桜の舞う
それからまた半年が経って、俺は小学校に入学してすぐに、優しい家族に引き取られた。
それが今の家。


俺の病気のことも知った上で、俺の過去も知った上で、それでも俺を引き取ってくれるらしかった。
幼ながらに、涙が止まらなかったのを覚えている。
世界はまだ、俺を見捨てていなかった。


一方伊織は、施設を出なかった。
伊織は自分の意思で施設を出ないと、言い張っていた。
どうせ迷惑をかけるだけだから、と眉をハの字にして笑っていたのを今でも忘れない。


実際、今も一応施設の人間ってことになっている。ラブホだったり、倉庫だったりに寝泊まりしてるけど。


中学2年のとき、義理の両親と義理の姉と、伊織と。
俺は順風満帆だった。
そんな時に、俺は8年ぶりに倒れた。
伊織と出かけている時で、俺は伊織が救急車を呼んでくれたことで、難なく体調は戻った。


しかし、伊織が気にならないはずもなく、俺は伊織に一切合切を話した。
実の親のことも病気のことも全部。
いつ死ぬかわからないことも、もちろん。
< 443 / 485 >

この作品をシェア

pagetop