綺桜の舞う
伊織は泣いてくれた。
俺のために泣いてくれた。
世界は最初から俺を見捨ててはいなかった。
ずっと隣に、伊織がいてくれていた。
頭の悪かった俺はそのことを、その時に、今更、気づいた。


それから1ヶ月後。学校の帰り道、夕日の沈む河原沿いの道を歩いてる時だった。
その頃すでに伊織の髪は赤かった。


「俺さー、族立ち上げることにした」
「は?何言ってんだよ、受験しろ」
「するよ。湊と同じとこ絶対行く。死ぬほど背伸びすることになるけど、それでも湊と一緒にいたいしなー」
「じゃあ、族とかいってる場合じゃないじゃねーよ」
「いや。俺の目的はいいとこ行くことじゃないんだって。
湊と一緒にいることだから。族作んのも湊の拘束時間増やすためだしねー」
「は?そんなことしなくたって俺は…」


「それにさ。もし、湊が倒れた時俺がいなくても一人じゃない方がいいじゃん。
俺、まだ湊とやりたいこといっぱいあんだよね」
「……なんだよ、やりたいことって」
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