綺桜の舞う
いや、俺もすごく怖い話なんだけど。
初めて女の子を見て、可愛い、なんて伊織みたいな思考になったわけで。
叶奏のあざとさにころっとやられた。


そんな女の子が毎日毎日俺の家に来るようになって、族のこと隠さなきゃだし、男的な色々ヤバいがあるしで、大変だった。


しばらくして、やけにぐいぐい叶奏が来るようになって、息をするみたいに告白してくるようになって。


俺の頭の中に過ったのは、自分の病気のことだった。


それこそ陽向と一緒だけど、万が一のことを考えて、俺には守れないと思っていて。
その上、いつ死ぬかわからないようなこの身体で叶奏を悲しませないで生きていく自信なんてなかった。


怖かった。
怖かったけど、付き合うしかないに追い込まれた瞬間、少しだけ、嬉しかったのを覚えている。


それから、ちゃんと向き合う決心をして、守る気で生きてきて。


……この前の抗争は、少し醜態を晒した気もするけど。

< 446 / 485 >

この作品をシェア

pagetop