綺桜の舞う
まぁ、前半の陽向の所業によるものだけど、私の守りが甘かったのもある。
今思ったら、もうちょっとやり方あっただろうなって。


「今日の腰の調子は?」
「痛み止めさえ効いたら、いつもよりはいい感じ」
「じゃあお風呂入ろーね」


さっきの表情なんて思わせないくらい満面の笑みで、ただの男子高校生になる瞬間。
彼女とお風呂に入るのに、異様なくらいノリ気だ。


「ねぇ陽向」
「ん?」
「一つだけ聞きたいんだけどいい?」
「なーに?沙彩ちゃん」


にっこにこで、あぁこの人は本当に脳内にお花畑を持ち合わせてるタイプの人間なんだなぁ、と、我が彼氏ながら少し哀れみの視線。


……いや、聞いちゃったんだよ、伊織くんから。


「春まで、彼女いたらしいじゃん」


陽向はピキッと固まって、沈黙が生まれた。
……ほんとじゃん。
いや、もう考えない方がいいのかもしれない。
聞いちゃったからにはもういまさら遅いだけなんだけどさ。
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