綺桜の舞う
どうしようもないような、気まずい雰囲気が部屋にいっぱいになる。
……私が、全面的に悪いのは、わかってるんだけど。
素直になれないのがいつも通りの私だ。


「……1個、下の子。沙彩ちゃんに似てたから、それだけ」


陽向はそれだけいうと、私の顔を強引に自分の方に向けて、チュッとわざとらしいリップ音を鳴らした。


離れた陽向の顔はムッとした顔。


「沙彩ちゃんのことが好きなんだよ?ずっと。何年も前からずっと好き。これ以外の事実ないから、勝手に拗ねないでよ。
僕だってたまには怒るよ」
「……ご、めんなさい」


陽向はムッとした顔で、でもどこか優しい声色で、私の寝るベッドに両肘をついて、続けた。



「そもそも。
沙彩ちゃん僕のこと舐めてるかもしれないけどさ。
2年分、沙彩ちゃんより人生経験あるわけなんだよ。
寂しいって気持ちは人並みにはわかってるつもりだし、沙彩ちゃんがそんな喧嘩口調で昔の女の話とかしなかったら雪兎のことなんて───」
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