綺桜の舞う
朔に言うか迷ったし、叶奏が綺龍に接触してきた時も、伊織に言うか迷った。
だけど、叶奏のことを売るような気がしてしまって、結局俺が取った行動は、何も知らないことにする、なんて一番曖昧な行動だった。


別に、裏切り者は徹底排除するような、ヒエラルキーの強い階層社会ではない。夜桜も、綺龍も。
仲間は、いつだって受け入れる気持ちでいることは理解していた。


ただ、知られた叶奏の気持ちは、俺には予想はできなくて。


……言っとけば、あの抗争は、起こらなかったんだろうけど。



甘えよう。伊織ならきっと、「結果論でしょ」って笑ってくれると……どうだろう。みんなのこと、危ない目に合わせてるから、一発ぐらいは殴られるかな。


……今度、ちゃんと伝えよう。


「俺伊織迎えに行くけど、ほんとに行かない?」
「話戻ってるけど。行かないって」
「勉強してばっかりもしんどいでしょ。気晴らし、どう?」
「……行けばいいんでしょ、行けば」
「うん、行けばいいんだよ」


入学式までに、これから殴られるところは治ってほしいな。
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