綺桜の舞う
51.決めごと
「……」
「落ち込まなくていいよ?ボク、頑張るから」
「うん……」


初めてきた、ユキのマンション。
結構高いところ。


ユキはソファでボクのことを抱きしめて、すごくすごく、落ち込んでいる。


というのも数時間前。


「手に入れたものを手放したくないから既成事実を作りたい」と言って、ユキすらも数年ぶりに、ユキとユキの実家の方に帰った。
婚約の話をするために。


まぁ当たり前だけど、お母様には真っ向から否定されたし、絶対許してくれると見込んでいたらしいお父様にも、「んー、ママがいいって言ったらいいよ〜」なんて返事をされてしまって、まぁ確かにそうだよねって。


イエスをもらえなかったユキは、とても落ち込んでいる。


「別に婚約が全てじゃないからね。ボク、逃げたりしないし、さ。
そんな落ち込まないでよ」
「わかってるよ、わかってるんだけど〜……」


親に、認めてもらいたいんだろうな……。
あんまりいい関係とは言えないからこそ、余計に。
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