綺桜の舞う
8.平手打ち案件
「おはよう湊くん」
「おはよ……鍵開けていいって言ってんのに」
「うぅん……でも無くしちゃいそうで不安だからおうちに置いとかないと」


マラソン大会の朝。
既にガッツリ決め込んでいる姫野。


最近知ったんだけども、こいつの体操着、特にズボンの方は、どうやら超絶短いすこぶる男子受けのイイあれを使っているらしく。冬なのに。


今年は俺のクラスと叶奏のクラスが合同の体育で、グラウンドやら体育館やら、場所が被った時の男子の視線がすごい。


ただでさえ運動神経だけは良い姫野だから、目立って仕方ない。


この前伊織から、細いわりに肉付きのいい太ももをさらけ出して、バスケなんかしようものなら、それなりに成長した胸が、なんて言われたときにはあばら一本折る勢いで殴った。


それが今日はどうだ。
普段と違って気合を入れてポニーテールだ。
マラソン大会。
無駄にうなじに視線がいく。
いや、まぁ……仕方ないんだろうけどさ。
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