綺桜の舞う
「……あの、」


俺が缶チューハイを開けて一口、隣で叶奏が既に半分飲んだときに、俺の頭の上から声がした。
琥珀だ。


「ん、あぁ、来てたんだ?」
「まぁ、その……叶奏ちゃんに会いたかったし、その……」


お、おに……と口籠る琥珀。
この前のお兄ちゃん呼びはきっと吊橋効果とか、アドレナリンとかそういう作用なのだろう。


後ろからそんな琥珀の動向を確認している雪兎の視線が少し邪魔だけど。


手を伸ばして琥珀の頭に手を置く。


「別に、そこは好きなように呼べよ。別に上とか下とか血繋がってるからとか、呼び方でどうこう言ったりしない」
「あ……えと、湊くん」
「ん?」


……あー、やば、既に酒回ってる気がする。
今日はやけに早いな。


「あの、その……別に、何があるってわけじゃ、ないんですけど……」
「うん」
「でも、たくさん知ってほしいことがあって、その……えっと……」
「なんでも聞く、いつでも聞く。だけど今日はやめよう、まじで既に酒回ってる感ある、俺」
「……弱っ」
「うるさい……ったく、ちょっとくらい融通利かせろよ」
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