綺桜の舞う
「そんなこと聞いてないよ。しんどくないか聞いてるの。
……そんなの、なんとなくわかってもん……可愛いって、言って欲しかっただけなの。私も殴ってごめんね」


そう言って姫野は俺の左の頬を撫でた。
触られると、ヒリヒリする。


だけど今、そんなのどーでも良くて。
俺の目の前には姫野がいて。


俺は思わず姫野の腕を引いた。


「きゃっ、」
「……姫野」


バランスを崩した姫野は俺の寝ているベッドにダイブ。
俺の上に降ってきて、姫野の腕は俺の顔の両サイドに着地。
俺はそんな姫野を腕の中に収めると、顔を赤くして俺を見る姫野に目を合わせる。


「みっ、湊くん……っ!?」
「寂しかった」
「ふぇ……きゃ、キャラ崩壊だよ?」
「知ってる。


……ごめん、俺。口下手すぎた。
言わなきゃなんないこと、いっぱいあった。
離れていくとかやめて。
ちゃんと飯食いに来て。
ちゃんと俺のバイク乗って帰ろ。
……叶奏」
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