綺桜の舞う
「えっとー……ないです」
「は?」
「皆さんに利益はないです。というか、何も浮かばないです。何か、して欲しいことはありますか?」


普通の顔をして首を傾げる姫野。


「うーん……叶奏ちゃんって、割と俺たちのこと舐めてる?
1人で来るのもそうだし、うーん」


伊織はずっと指で合図をすると、陽向がひょっこり立ち上がって、るんるんで姫野の隣に歩く。
そして、「ごめんね?」と呟くと、こぶしを飛ばした。


うちの族で1番喧嘩が強いのが陽向。
その拳は当たり前に速くて、まぁこういうときは寸止めって決まってるんだけど。


「あと3センチ、余裕あるよ?」


ビビるような素振りもなく、微動だにせず、表情すらも変わらない。
かわす事もなく、ただ真っ直ぐに陽向を見つめて笑顔を向ける。


「……っ、い、いおりんっ!」
< 6 / 485 >

この作品をシェア

pagetop