綺桜の舞う
10.水面下の反逆者
「えー……っとね」


桜の咲いた春。
進級後すぐの、穏やかな日。
……重苦しい雰囲気の、赤髪。


いつも通り屋上。いつもと違うのは、叶奏と蛍がここにいること。


「いおりんどしたの?」


陽向が俺の肩に顎を置いて聞く。


今日ここにこうやって集まったのは、伊織が何かいいたそうな顔で呼び出したから。
いつにもなく、思い詰めた顔で言葉を詰まらせる。


「んー……と、あのね。
綺龍の倉庫の幹部室なんだけどさ。
盗聴されてるかも」
「は?」
「ソファ裏のコンセント。いじった形跡見つけちゃったんだよね〜」
「……誰かが、ってこと?」


俺がそう聞くと無言で頷く伊織。


「つけた誰かが、綺龍の倉庫にいる可能性高いね?」
「だね〜。つけてから多分、1ヶ月は経ってる」


どうしようかと、唇を触るのは伊織が悩むときの癖。
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