綺桜の舞う
「え、泊まっていいの?」
「うん。風呂は自分の部屋で入ってきてほしいけど」
「わかった!」


嬉しそうな顔で叶奏は、頷く。
鞄を持って部屋に戻っていく叶奏を見届けて、俺も風呂に入って、伊織に電話をする。


『もしもし〜?珍しいね〜?調子悪い〜?』
「なわけ。叶奏から。
スパイ確定、今叶奏の鞄に盗聴器仕掛けられてるから今日は泊める」
『……りょーかい。怪しまれないように明日、明後日は帰して。そこからはうちに泊まってきな』
「あぁ」
『夕と陽向にも伝えとくね』
「頼んだ」


電話を切って振り返る。


「なんのお話?」
「……気配消して入ってくんのやめろ」
「えへへ」
「お前の話。
明日明後日は家帰れって」
「ん、わかった」
「ストレスたまるだろうけど。ちょっと我慢な」
「大丈夫だよ〜、それより」


ギュッと、抱きついてくる叶奏。


「……湊くんには、先に言っておきたいことが、あるの。明日の、お話」


小さな声で呟く叶奏の声は、どこか震えていた。
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