綺桜の舞う
「……湊くんって、人前で好きとか言ったり、デレたり、しないよね?」


……別に叶奏と2人きりでもそんなにデレることはないけども。


「……まぁ、ないな」
「幹部室でも、そんなことしてない?」
「……あー、」


2人になったら、まぁ。
叶奏はデレデレだから。


「……たまに」


「そ……か」


蛍は俯きがちに、茶髪を耳にかける。
大きく息を吸って、吐いて。
いつもより、小さい声で。


「……くん」
「あ?」
「なる、くん。スパイ」


ぽたっと落ちた涙が黒く地面を染めた。


「成くん、だった。


でも、でも。
違うかもって、思って……叶奏のこと、どう思う?って。聞いたの。


『何もないのに、自分を貫けるのはすごいと思います』……て、言われて。


でも、どうしても信じれなくて……」
< 80 / 485 >

この作品をシェア

pagetop