綺桜の舞う
◇ ◇ ◇
倉庫には制服姿の成もいて、蛍はどうするだろうと思ったけど、何もないみたいにいつもどおり成の隣に座って、話を始めた。制服のまま。
成に作られた傷を、成で癒すという、苦行を選択したらしい。
1人で2階に上がるわけにもいかないし、とりあえず着替えるだけ着替えて降りてきて、俺は俺の定位置で、倉庫の中を見渡していた。
夕方。成は倉庫から出て行った。
蛍が「どこいくの」と引いた腕を「すいません」と申し訳なさそうに笑って振り解いた。
入れ違いに入ってきたのは夕。
手持ち無沙汰になった蛍はちょこんと俺の横に座った。
「……早いな」
「まぁな」
多分、連絡がいってるはずだと思う。
その証拠に、夕は蛍の頭を優しく撫でた。
「……蛍、朔以外に撫でられるのは好きじゃない」
「は?うざ」
俯いてそういう蛍の目には昼間と同じ、涙が溜まる。
それからものの10分。
なんの前触れもなく、倉庫のシャッターが吹っ飛んだ。