綺桜の舞う
すれ違った人の中であなたが一番危なそうに見えます。


「んで、その蛍は?帰る場所あんの?」
「……ない、です」
「んー。そ。ホテル泊まる?」
「へ……」
「……言っとくけど、なんもしないからな?」
「……」


それは嘘だって、さすがにわかる。
だって、こんなホテル街に、何もする気なくて来る人なんて、いない。


「お金、ない」
「俺が出してやるよ」
「…………蛍のこと、殴らない?」
「何で殴んだよ」
「怖い、から」


あ?と睨まれて、蛍はビビってしまう。


「別に、誰彼構わず殴るような人間じゃねーよ」
「……泊まり、たいです」


殴られないなら、痛くないなら、お家に帰るより、全然マシだって思った。
蛍は、目の前の彼を信じるしかなくて、すぐそこのホテルに一緒に入った。
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