My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
1.懐かしい音色
ゆらゆらゆらゆら。
光の届かない海の底を私はひとり漂っていた。
まるで自分も海の一部になってしまったかのような心地の良い揺れに、ただ身を任せる。
「……ん……華音……」
声が、どこからか聞こえてくる。
それと、懐かしい音。もう何年も聴いていない気がする音色。
これは、ピアノの音……?
「約束しただろう、華音」
約束……?
「また歌ってくれって、約束したじゃないか」
歌。
約束。
――うん、約束した。
帰ってきたら、また歌うねって……。
「答えてくれ、華音」
(響、ちゃん……?)
こぽこぽと私の周りに小さな泡が立つ。
「ッ、華音!?」
ピアノの音がぴたりと止まって、懐かしい声が鮮明に頭に響いた。