My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
そしてアヴェイラは穏やかな口調で続けた。
「それを見ていて気付いたんだよ。あんたが誰かに大切に想われてるって」
「!」
「それがラグ・エヴァンスだったんだねぇ」
また胸が小さく音を立てて、顔の熱がまた上がった気がした。
(でも、それは……)
目的のために、私がいなくなったら困るからで……。そう口から出かかって、やめる。
そんな話をし始めたら、ラグの呪いのことまで全て話さなければならなくなる。
「ま、そんなあんたを奪っちまったのはあたしだけどさ。そんなに想って、想われて、ただの仲間ってのはねぇ」
「……」
私が何も返せないでいると、アヴェイラはそんな私を見て微笑んだ。
「だから悪かったね。もうラグ・エヴァンスのことを悪く言ったりしないよ」
「う、うん」
私は小さく頷く。
そう願ってラグの話をしたのだ。喜ぶべきなのに、うまく笑顔にならなかった。