My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
アヴェイラが扉の方に視線をやる。
「フィルもあの調子だし、よっぽどイイ男なんだろうねぇ、ラグ・エヴァンスってのは。あたしも一度話してみたくなったよ」
「あ、でも、本当に無愛想な人でね」
慌てて言うと、アヴェイラはこちらを振り返り声を上げて笑った。
「わかったって。でも実は優しいイイ奴なんだろう?」
「そ、そう」
私がぎこちなく頷くと彼女はもう一度笑い、それから立ち上がった。
「さぁて、じゃあそろそろ歌の練習を始めようかね。頼んだよ、カノン先生!」
「先生って」
アヴェイラが早々に発声練習を始めて、私は苦笑する。
そうして、なんだかすっきりとしない気分のまま今日も歌のレッスンが始まった。