My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
途端、喉の奥の方がきゅうと苦しくなった。
ほら。今だって想像するだけで、こんなに寂しい気持ちになるのに。なのに『好き』なんて想いまで出来てしまったら。
(好きになってしまったら……)
ふいにラグの色んな顔が目蓋の裏に浮かんだ。
いつもの不機嫌な顔。怒ったときの怖い顔。お前なぁと向けられる呆れた顔。
そして、不器用な笑顔。
(きっと、帰りたくなくなってしまう)
――そんなのダメだ!
ハンモックの上で私は頭を振る。
元いた世界に私の帰りを待っている家族がいる。いつか見た夢でお母さんが泣いていた。お父さんの悲痛な声が聞こえた。友達もみんな泣いていた。
だから、私は帰らなきゃいけないのだ。